接続詞(coniunctio)

ここでは、接続詞(coniunctio)について見ていこう。「coniunctio, coniunctionis」は「coniungo, coniunxi, coniunctum, coniungere」に由来し、要するに複数のものを(con)結び繋ぐ(iungo)ものである。副詞との境界は明瞭でないから、繋ぐ役割をすること ばはすべてここにまとめる。現代語と同じく、接続詞には等位接続詞と従位接続詞の二種類があ る

等位接続詞

等位接続詞は、文中の等しい要素(語と語、句と句、文と文)を結びつけるものである。

①「A+B」(及び)ないし「A∧B」(かつ)を表すもの

AとBの論理関係によって、更に細かく分類することができる。

②選択を表すもの

aut A aut B
A又はBのいずれか
vel A vel B
A又はBのいずれか
A aut B
A又はB
A vel B
A又はB
A Bve
A又はB

③「(¬A)∧B」を表すもの

non A sed B
AでなくてB

④「(¬A)∧(¬B)」を表すもの

nec A nec B
neque A neque E
AもBも~でない
(non A) nec B
(non A) neque B
Bも~でない


従位接続詞

従位接続詞は、従属節を導く接続詞である。接続法というのは従属節に現れる叙法ということであるが、現代語を見ればわかる通り、従属節のなかは必ずしも接 続法を使うわけではない。つまり、「(接続法)⇒(従属節の話法)」なのであって、「(従属節の話法)⇒(接続法)」ではないのである。このため、次のよ うに分類する必要がある。

①接続法支配の従位接続詞


ne ...
~しないように(目的文)
quin ...
(主文は否定文)~しないほど(結果文)
もともと

②直説法支配の従位接続詞


postquam ...
(完了時制を従えて)~した後に

③接続法・直説法支配の従位接続詞(いずれを支配するかで意味が変わるもの)


cum ...
  • 接続法支配
    • ~ときに(時間文、"cum" historicum)
    • ~なので(理由文、"cum" causale)
    • ~だけれども(譲歩文、"cum" concessivum)
    • 一方~だが、他方(対照文、"cum" adversativum)
  • 直説法支配
    • ~ときに(時間文、"cum" temporare)
    • ~ときはいつも(時間文、"cum" iterativum)
    • ~ときに(時間文、"cum" inversum)
    • ~することによって(時間文、"cum" coincidens)
    • (完了時制又は史的現在時制を従えて)~するや否や(時間文、"cum" prinum)
ut ...
  • 接続法支配
    • ~するように(目的文)
    • tam ..., ut ...:~するくらい~だ、とても~なので~だ(結果文)
    • (間接疑問文で)どのように~か
    • 仮令~でも(譲歩文)
  • 直説法支配
    • (比較文で)~するように
    • (完了時制を従えて)~するや否や
quod ...
quia ...
quoniam ...
quando ...
~だから
  • 接続法支配:主観的な理由付け。
  • 直説法支配:客観的な理由付け。

④接続法・直説法支配の従位接続詞(どちらでもよいもの)


antequam
priusquam
~する前に

⑤補足:心配動詞(verba timendi)と妨害動詞(verba impediendi)

心配動詞(verba timendi)と呼ばれる一群の動詞は「ut」や「ne」により従属節を導くが、その意味は現代語から見れば肯定と否定が逆さまに見える。例えば、 「timeo, ut veniat」というのは「私はやっこさんがが来ないんじゃないかと心配だ」ということであり、「timeo, ne veniat」というのは「私はやっこさんがが来るんじゃないかと心配だ」ということである。

妨害動詞(verba impediendi)でも同じことだが、この場合は肯定文を従属節にとることはない。「ne」ないし「quominus」により従属節を導かれる従属節 の意味は、現代ヨーロッパ言語に訳せば肯定文になるのである。とはいえ、日本語では、(「~することを妨げる」という他に)「~しないように妨げる=~し ないようにする」という言い方もできるので、その語感と同じだと思えばよいだろう。例えば、「impedio, ne fugiat」は「私は奴が逃げないようにする」ということである。
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