動詞の活用(coniugatio)

ラテン語の動詞は、

をパラメータとして語尾を変化させる(変化させたものを定動詞という)。また、動詞を形容詞として用いる場合(分詞)や、名詞として用いる場合(不定詞・スピーヌム・ゲルンディウム)にも、動詞の語尾を変化させて切り抜ける。

これらの語形変化をまとめて、動詞の「活用(coniugatio)」という。この章の課題は、この活用をマスターすることである。多くの言語で消失した格変化に較べ、動詞の活用は現代のヨーロッパ言語にも多く残っているので、こみいった説明は必要ないだろう。

さて、とりあえず定動詞に限って話を進めよう。態には

の2つ、時制には
の6つ、叙法には
の3つ、数には
の2つ、人称には
の3つがある。

したがって、単純計算でいくと、2*6*3*2*3 = 216、つまり、定動詞だけで216の形を覚えなければならないことになる。

しかし、実際にはそんなに多くはない。
結局、一つの動詞につき、216-24-48 = 144の形を覚えればよいことになる(命令法の人称変化は不完全なので、実際にはもう少し少ない)。

とはいえ、仮に1000語動詞を覚えるとして、144*1000 = 144000、つまり14万4000の形を一つ一つ覚えていかなければならないのであろうか。そんなことはない。格変化にパターンがあったように、活用にもパターンがあるのである。そのパターンの代表的な動詞の活用を覚え、かつ、動詞がどのパターンに属するかが判れば、自ずと活用は出てくるのである。

このパターンには、大きく分けて5つの型がある。
これらの型に分けるには、(イ)能動態現在時制直説法一人称単数形と(ロ)能動態現在時制不定詞とが判れば十分なのであるが、更に細かいパターンに分け、 また、活用の全貌を知るためには、(ハ)能動態完了時制直説法一人称単数形と(ニ)スピーヌムが必要である。この四つが基本形とか主要部とか言われるもの であるが、その並べ方には、次の2種類がある。
どちらで覚えてもよいが、このサイトでは後者を採用することにする。そこで、番号の振り直しを兼ねて、もう一度四つの基本形を整理しよう。
さて、ここからは、定動詞に限定していた射程を、再び活用全般に戻そう。動詞を活用させて得るべきものは、定動詞・形容詞形・名詞形の三つであった。これらが、どのようにして上記の形から導かれるか、概要を示しておこう。
以上のルールは、すべてのパターンで妥当する(つまり、活用はきわめて規則的である)ので、5つの型で144の形といっても、驚くほど簡単に覚えられるだ ろう。なお、附言すれば、分詞とそれを応用した不定詞では格変化を行うが、これは既に見た格変化のパターンの応用なので、特に新たに覚えることはない。

さて、個々の動詞を活用させるには、その動詞がどのパターンに属する かを判別する必要がある。この目的のために、名詞の格変化のときに示したようなフローチャートを示しておこう。(改訂予定)
甲式・乙式・丙式というのは、③に着目した分類で、私が勝手に考案したものである。
このように細かく分類すれば、多くの動詞を「不規則活用」に分類せずに済み、覚えやすくなる。
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